2008年1月4日

京都市政の経済政策の失敗の理由

Filed under: 岡田登史彦の政策提言の背景・考え — admin @ 2:19 AM

その歳出決定の判断が正しかったのかどうかにつき検討しようとするものです。

 もともと経済が好況で順調に税収が伸びる状況にあるときは、あまり問題とならないものなのですが、税収の伸びが期待できないときに、どのように対応するかということが、都市経営において大変重要なポイントとなるのです。

(2)義務的経費についての考え方
 近年の高齢社会の福祉費や、不況による生活保護費等の義務的経費としての扶助費の増加は、国家が憲法第25条により国民の生存権の保障していることもあり、減額するようなことがあってはならないと思われます。また都市経営の目標を市民一人ひとりの安心・安全な生活を確保するためとするなら、減額することは大変難しいと思います。
 次に、市債・借入金に対する元利金の償還・返済も、今後とも円滑に都市を運営してゆくには、資金調達面での不安があってはなりません。この不安を払拭するためには都市としての信用力を高める必要があり、元利金の償還・支払は最低限度のマナーであり、決して滞ってはならない性質のものであります。
 このような理由から扶助費や公債費はもともと歳出削減になじまない義務的経費として考えねばならない費用項目であると思われます。

(3)義務的経費増加に対する対応策の在り方*
税収の伸びが期待できないときに、これら義務的経費が増加基調にある場合、その増加する経費支出に対して如何に対応するかでありますが、現実的には対応できる施策はあまり多くはありません。

 その対応策として、まず第1番目として、積極的に無駄な支出を削減してスリムな行政システムを構築することだと思います。2番目は、京都市が運営する施設の収入の増加をはかり、税金や保険料の徴収率を高める必要があります。そして3番目は、不要な資産を売却し債務の償還に努め、借入コストの削減に努める必要があります。

(4)都市経営の戦略的基本方針の必要性
 このような施策を実施する場合に、都市経営における戦略的な基本方針が策定されておかねばなりません。それはどのような都市づくりを目指すかということが大変重要なポイントです。なぜならその目指す方向が違うと、将来できあがる都市そのものが大きく変貌してしまう可能性もあるからです。
 つまり、どの費用項目を削減するかは都市経営における戦略的判断そのものといえます。

 わたしとしては、市民一人ひとりが安心して暮らせる街を作りたいと思っています。そのためには都市としての自主財源比率を高め自立性を重んじ、十分な市民・住民へのサービス提供に努めたいと思っています。ただ自主財源の比率を高めるには、京都経済の活性化と、より一層の発展が必要と思われます。

 わたしは、域内経済の発展なくして、地元の福祉の充実はないと思っています。それだけに福祉のために地元経済の発展を望んでいます。

(5)過去11年間の京都市の対応策について
 ここでは、性質別決算額を分析しやすいように3つに分類して検討しました。
(A)削減が困難と思われるもの  :=(義務的経費)=扶助費+公債費
(B)内部管理的経費と思われるもの:=給与費+繰出金
(C)外部に発注され経済的波及効果があると思われるもの:
                 =物件費その他+投資的経費

 以上の3分類した結果、平成7年度と平成17年度の決算額シェアー推移は表1のとおりですが、結果として、(A)の扶助費+公債費は22.6%から32.3%の9.7%上昇したのに対して、(B)の給与費+繰出金は32.9%から34.3%と1.4%の増加にとどまりほぼ横ばいとなっていました。ところが(C)の物件費その他+投資的経費が44.5%から33.4%へと11.1%も大きく下降しました。
 
 いま平成17年度の決算額は平成7年度を100とすると94.9ですが、この94.9を標準の100として置き直して各経費項目を再計算したものが右の欄の数値ですが、これでいうと給与費と繰出金の合計(B)は104.2、これに対して物件費その他と投資的経費の合計(C)は75.0と大幅に減少しています。

 この状況を金額面でとらえますと、全体の決算額では363億円減少しているにもかかわらず、義務的経費である扶助費と公債費の合計(A)の金額は571億円の増加となっています。この増減合計額934億円を、給与費と繰出金の合計(B)で25億円の減額と、物件費その他と投資的経費の合計(C)の909億円の減額で賄った格好となっています。

(6)分析結果
 物件費その他と投資的経費の合計(C)の総額909億円の経費削減は、あくまでも平成7年度と平成17年度の比較から算出された単年度の経費削減額です。平成17年度に至るまでの各年度においても相当額の経費削減が実施されてきており、結果として、この削減額のほとんどを物件費その他+投資的経費で賄った格好となっています。単純計算ですが11年間にゼロから909億円になったとすれば、その総額は909億円X11年/2=5,000億円となり、これは11年間に5,000億円の累積額の減少となったことを意味します。

 もともと物件費その他と投資的経費は経済的波及効果の大きな金額であります。また京都市役所に出入りしている中小企業や自営業者にとってはその経費削減額は、そのまま売り上げを失うことを意味しています。過去11年にわたる経費削減に名を借りた発注の減少は、彼らを倒産や休業に追い込んでしまったと思われます。
 本来ならば、給与費や繰出金をも含めた全体の経費項目から経費の削減を実施しておれば、これほど中小企業や自営業者に影響はなかったのではないかと思われます。

 京都市内の中小企業や自営業者の経済的不況は官製のものといえるのではないでしょうか。

 もし、圧縮すべき歳出金額を、給与費や繰出金の項目からも相当額を減額し、その分を物件費その他と投資的経費の減額分を少なくしていたら、これだけの倒産や就業者の減少には至らなかったのではないでしょうか。(平成8年度から平成16年度間で京都市内の従業者ベースで就業者数が約13万人減少しています。政令指定都市では最悪です。既報済み)

 一刻も早く、中小企業や自営業者を救済するための緊急経済対策を実施すべきだと思います。

表1:平成7年度と平成16年度の性質別決算額ならびにその増減比較

  平成7年度 平成17年度 増減 増減 合計Cの
増減94.9
を基本とし
た時の
増減率
  決算額(X)
(億円)
比率
(%)
決算額(Y)
(億円)
比率
(%)
決算額
(Y-X)
(億円)
比率(Y/X)
(%)
100/94.9
(%)
扶助費 968 13.7 1,339 19.9 371 138.3 145.8
公債費 632 8.9 832 12.4 200 131.6 138.7
(A)合計 1,600 22.6 2,171 32.3 571 135.7 143.0
給与費 1,350 19.1 1,301 19.4 -49 96.4 101.5
繰出金 975 13.8 999 14.9 24 102.5 108.0
(B)合計 2,325 32.9 2,300 34.3 -25 98.9 104.2
物件費その他 1,697 23.9 1,405 20.9 -292 82.8 87.2
投資的経費 1,457 20.6 840 12.5 -617 57.7 60.8
(C)合計 3,154 44.5 2,245 33.4 -909 71.2 75.0
合計(A+B+C) 7,079 100.0 6,716 100.0 -363 94.9 100.0

表2:京都市の性質別決算額推移(平成7年度から平成16年度まで)

  性質別決算額(単位:%)
  扶助費+公債費(A) 給与費+繰出金(B) 投資的経費+物件費その他(C)
平成7年度 22.6 32.9 44.5
平成8年度 23.2 33.9 42.9
平成9年度 24.9 35.1 40.0
平成10年度 24.5 31.3 44.2
平成11年度 25.6 33.1 41.3
平成12年度 26.5 33.5 40.0
平成13年度 28.1 35.4 36.5
平成14年度 31.2 35.5 33.3
平成15年度 33.2 33.6 33.2
平成16年度 32.6 33.8 33.6
平成17年度 32.3 34.3 33.4
H7対H17増減 9.7 1.4 -11.1

図1:京都市の性質別決算額シェアー推移(平成7年度から平成16年度)

[出典]
京都市の各年度決算よりわたしが加工したものです。
http://www.city.kyoto.jp/rizai/shukei/yosan/index.html

以上


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