2008年1月3日

政令指定都市の連結会計バランスシートから見た今までの京都市の都市経営について

Filed under: 岡田登史彦の政策提言の背景・考え — admin @ 2:17 AM

――連結会計、特別会計(公営企業会計)ともに経営成績が他都市対比悪いことが判明――

 各政令指定都市間の都市経営における経営結果を評価するには、「普通会計」に「公営企業会計」を合算した「連結会計ベース」を使用することが、もっとも最適な方法だと思われます。今回は、神戸市が平成19年9月に発表した「平成18年度『バランスシート』と『行政コスト計算書』」の中からその情報の一部を加工して、連結会計ベースでの各都市の都市経営を分析してみました。その中から京都市の結果を報告したいと思います。

 連結会計バランスシートベースでは資産負債差額比率(=資産に対する正味資産比率=企業会計における自己資本比率)の大小を比較すれば評価できるのですが、どの会計が経営成績に影響を与えているのかを判断するには、単体ベースでの「普通会計バランスシート」と特別会計としての「公営企業会計バランスシート」をも分析しておくことが重要なことと思われます。

 そのため、ここでは、「普通会計ベース」、「特別会計ベース」、「連結会計ベース」の3項目それぞれの資産負債差額比率を一つの表に取りまとめてみました。

表1:「普通会計」「特別会計」「連結会計」の資産負債差額比率一覧表

人口
順位
  正味資産比率(=自己資本比率)(注1)
  特別会計(A) 連結会計 普通会計(B) 減少値(B-A)
(%)(注2) 順位   順位   順位   順位  
15 静岡市 1 48.5 2 58.6 6 63.6 5 15.1
9 さいたま市 2 48.3 1 63.4 1 70.3 7 22.0
5 神戸市 3 42.7 4 56.3 3 65.8 8 23.1
8 川崎市 4 42.3 8 50.4 11 55.5 2 13.2
12 北九州市 5 42.1 3 42.1 5 63.6 6 21.5
11 仙台市 6 41.8 7 50.8 9 57.0 3 15.2
13 千葉市 7 41.6 13 44.3 15 45.9 1 4.3
14 堺市 8 41.1 5 56.2 2 66.0 9 24.9
10 広島市 9 38.7 9 48.0 12 55.1 4 16.4
7 福岡市 10 29.4 11 44.7 10 56.4 10 27.0
1 横浜市 11 29.2 12 44.4 8 59.4 11 30.2
4 札幌市 12 27.8 6 51.6 4 63.7 15 35.9
6 京都市 13 24.5 14 39.8 14 51.4 12 26.9
2 大阪市 14 24.4 10 47.1 7 59.8 14 35.4
3 名古屋市 15 21.2 15 38.0 13 53.4 13 32.2
  平均   34.0   49.3   59.2   25.2

(注1):神戸市・仙台市は18年度データ、その他の政令市は17年度データを使用。人口は各年度末の住民基本台帳人口を使用しています。
(注2):特別会計=連結会計-普通会計として簡便法的に算出しています。

図1:表1を図式化したもの

*分析結果*
 (1)京都市の資産負債差額比率は、
連結会計ベースで39.8%と15都市中14位、
普通会計ベースで51.4%と15都市中14位、
特別会計ベースで24.5%と15都市中12位と非常に経営成績は悪くなっています。

 (2)上記表1から総じて、人口の少ない都市がそれぞれの資産負債差額比率が上位となっています。
 しかし、表1の抜粋1から人口の規模が同程度の札幌市(人口順位4位)から川崎市(同8位)までの5都市でみると、人口の大小でその順位が大きく影響されているというよりは、京都市の経営成績そのものが悪くて順位が低くなっていると思われます。

(表1の抜粋1:資産負債差額比率(=正味資産比率))

人口
順位
  資産負債差額比率(=正味資産比率)
  連結会計順位 普通会計順位 特別会計順位
4 札幌市 6 4 12
5 神戸市 4 3 3
6 京都市 14 14 13
7 福岡市 11 10 10
8 川崎市 8 11 4

(表1の抜粋2:特別会計の資産負債差額比率)

人口順位   順位 特別会計の資産負債差額比率(%)
5 神戸市 3 42.7
8 川崎市 4 42.3
7 福岡市 10 29.4
4 札幌市 12 27.8
6 京都市 13 24.5
2 大阪市 14 24.4
3 名古屋市 15 21.2

 しかし、表1と抜粋2より、特別会計における資産負債差額比率で各都市を比べると、この京都市の比率24.5%は15政令指定都市の平均値の34.0%から10ポイント程度も下回る悪さで、大阪市の24.4%と名古屋市の21.2%とともに特別会計における資産負債差額比率の低位グループを形成しています。
 これが、普通会計の資産負債差額比率の数値の悪さと合わせて、連結ベースでの資産負債差額比率の悪さの原因となっています。

 (3)この京都市を総合的に行政改革するには、連結会計ベースでの資産負債差額比率を高める努力をしていかねばなりません。
 今回新たに判明したことは特別会計を構成している公営企業会計の経営改善も都市経営として京都市を良くしていくためには不可欠であるということです。
 連結の対象となっている関係団体としての「一部事務組合」「地方公社」「第三セクター」といった機関もしっかりと見直さなければなりません。

[出典]
 上記の表1の1人当たりの資産金額・負債金額・正味資産金額ならびに連結会計ベースの資産負債差額に対する資産比率については神戸市の「平成18年度バランスシートと行政計算書」P18の(4)他都市との比較第3表市民一人当たり連結バランスシートより引用。
http://www.city.kobe.jp/cityoffice/09/071/bspl.pdf

以上


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